大腸・小腸ドックの意義とその対象

人間ドック健診を行う意義とは、罹患数・死亡数における順位の高いがんを発見しそして治療に繋げる事ではないかと考える。元来、小腸は発がんしにくい器官であり、小腸ファイバースコープを用いてスクリーニングすることはない。そのため、少数の健診施設でも小腸カプセル内視鏡が導入されている程度にとどまっている。しかしながら、停留などの合併症のリスクを伴う事も鑑みると、スクリーニングで行う意義というのは薄いように思える。
一方、2014年にがんを原因として亡くなった日本人の数は約36.8万人。そのうちの大腸がんの死亡者数は約4.8万人と全体のおよそ13%を占めており、年齢調整死亡率こそ減少しているものの、実数としては増加傾向にあるのだ。加えて、部位別死亡順位においては、2014年に初めて男女合計数で胃がんを抜き第2位となった。なお、女性の場合がんに関わらず全死亡原因のトップがこの大腸がんなのである。従って、大腸の検査というのは大変重要であり、人間ドック健診においてオプションという形で大腸検診を導入する施設が現在増加傾向にある。東海大学医学部付属東京病院では、2006年の時点で大腸ファイバースコープを導入しており、費用は2万5千円と設定しているようだ。そしてこのオプション検査を受診する人の数も増加しつつある。
さて、この大腸ファイバースコープの対象となる人はというと、①大腸ポリープや大腸がんの既往を持っている人②大腸ファイバースコープを一度も受診したことが無い50歳以上③前回の受診時に便潜血要陽性で精密検査を受けなかった人④大腸がんの家族歴を持つ人⑤生活習慣から見て発がんするリスクが高い人(肥満体型で運動不足・死亡や動物性たんぱくを好んで摂取している人など)⑥便通異常者などが挙げられる。
年齢別の傾向でいうと、男性は50代後半から60代前半がピークであり、女性の場合は年齢とともに上昇することが分かっている。この点に加え、家族歴・症状等を念頭に置いた勧奨が重要であるといえるだろう。